Gerateria SINCERITA

Blog: ジェラートマイスターのブログ

いつも、ジェラートのことを考える。
いつも、どうすればもっと美味しく作ることが出来るか考える。
そういうプロセスが大切だと思うから、少しだけ書き連ねていこうと思う。

どんなメディアよりも、自分の言葉が一番しっくりくるものです。
ちょっとしたお知らせとか、ちょっとした思い付きとか、
自分の言葉で伝えたいことを
ゆるりとお伝えしようと思います。


探究心と忍耐力。

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画像:探究心と忍耐力。

昨日はウッドベリーズの田川さんと共に山梨までネクタリン生産者の丹沢さんを訪ねた。

ネクタリンは油桃とも呼ばれ、ツルッとした皮(白桃は産毛のようなものがあるのに対し)と程よい酸味があるのが特徴の桃の一種である。
お恥ずかしながら、ジェラートの仕事を始めるまで名前は聞いたことがあるかな。くらいで、食べたことはなかった。
でも、仕事柄、色々な果物をジェラートにしていると、八百屋で見つけた知らない果物は大抵試すので、7年前くらいに買ってみたのをよく覚えている。
そのネクタリンはプラムくらいのサイズでカチカチで包丁で切るのがやっとというくらい固いものだったし、食べても味気なくてネクタリンって微妙なんだなと思いつつ、数年間は買っては試してみてというのを繰り返したけど、結局、ネクタリンて微妙なんだなという結果に落ち着いていた。

それが、田川さんが果物の中でもネクタリンが一番好きくらいなことを話していて、えっ!ネクタリンって美味しいんですか?というくだりの話をしたのが昨年の話。
そして、丹沢さんを紹介してもらって晩成品種のネクタリンを使わせてもらって、ネクタリンの美味しさに開眼した訳であります。

前置きが長くなったけれど、そういう訳で山梨まで行ってきた。

長いトンネルを抜けた山々に囲まれた盆地に白桃やぶどう、プラムなどが沢山、作られている場所で、昼夜の気温差が大きく果物作りに向いている土地のようだ。

丹沢さんの第一印象も訪れた後の印象も変わらずで、「姿勢を正した人」という印象だった。
スラッとしていて、物理的にも本当に姿勢が良かったのだけど、それ以上に物事に対する姿勢がとても正しい感じがした。

丹沢さんは実際、ネクタリンを日本に持ってきた第一人者のようなものだそうで、40年以上もネクタリンを作り続けている。
ネクタリンを40年。これは個人的には本当に物凄いことだと思う。
例えば、さくらんぼ、苺、リンゴみたいなメジャーで誰でも知って、誰でも食べたことがあるような果物だと、品評会があったり、贈答にも使われやすかったりするものだけど、それほど知られていない果物の場合、まず「知ってもらう」ことから始めなければいけないし、知らない食べ物は往々にして美味しいと感じてもらうハードルが高い。

そんなネクタリンを作り続ける意気込みや志が本当に高くて、探究心の塊みたいな人だ。
元々、研究機関にいらっしゃったことや海外で勉強されたことなども影響していて、これほど生物学的観点から果物の生育について、美味しさ、甘さの構造についてしっかりと言葉で説明してもらったのは初めてかもしれない。
農家の方も意外と感覚でやられている方も多い印象があるけど、丹沢さんはどちらも併せ持ったスーパーマンみたいな人だと思う。大袈裟じゃなく、こういう方がいるから日本の果物のレベルが高くなり続けているんだろうなと思う。

一緒に畑をまわりながら、研究用畑も見せてもらった。
種から3、4年かけてようやく食べることができるネクタリンができるのだけど、自分で何パターンも掛け合わせを試し、品種改良をし続けている。それぞれの実験的なネクタリンも沢山食べさせてもらって、この木のは美味しいから残す、これはダメだからもう切っちゃうとか言いながら、嬉しそうに話されていた。
途方もない時間と手間をかけながら、美味しい品種開発を一人で黙々と続けられていて、こんなこと、なかなか普通のこととは思えなかった。僕たちがちょっとジェラートの試作を作るのとは訳が違う。40年間、こんな途方もない作業を続けてこられた忍耐力にも驚く。

何かの話の中で「労力をかけるべき時に、ちゃんとかけれるかが大切なんです。」と話されていた言葉が頭に残っていて、僕も美味しいものを作ることは、そういった労力をかけるべきポイントみたいなものがあるとずっと考えていて、全てに満遍なく労力をかけることがベストじゃなくて、ここ!という所に、集中して手間暇かけることが大切だと思うので、果物もまた同じでなるほどなと思った。

具体的な育て方のポイントや糖度を上げること、果肉を大きく作る方法も色々教えてもらった。とにかく、科学者みたいに具体的な数字で教えてくれるので時には難しくもあるけど、理にかなったお話ばかりだった。

どんな果物だって、自然に育つ。育つ仕組みがあって、果実ができる仕組みがある。その仕組みの流れを把握した上で、人の手で果実にいくエネルギーを調整してやるようなことが、美味しい果物を作るということなんだろうなと改めて感じた。

名前なんてない品種をいくつか食べさせもらった中で素晴らしく美味しいネクタリンがあって、ぜひ、これをお願いします!と二人してお願いしてきた。

美味しいネクタリンを知らない人が世の中に沢山いると思うともったいなくて仕方ないので、そのままジェラートにするのでぜひ、ネクタリンのジェラートを食べてみてほしいなと思う。

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